識名園は、琉球王国の面影が残る歴史的な建造物です。
もともとは琉球国王であった尚家(しょうけ)の別邸で、中国との貿易において重要な役割を担っていた場所でもあります。
沖縄の歴史を感じたい人や、自然が好きな人にもおすすめの識名園。見所や所要時間、料金などを詳しく解説します。
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識名園の歴史と起源
識名園は、琉球国王の別邸として1799年に創建されました。
琉球王家の別邸は他にもありましたが、ここ識名園はその中でも最大級。広さはなんと41,997平方メートル(約12,726坪)です。
識名園がつくられた理由は、中国皇帝の使者である冊封使(さっぷうし)をもてなすためだといわれています。
15世紀から16世紀にかけての琉球は、中国、日本、朝鮮、東南アジア諸国をむすぶ中間地点に位置する「中継貿易地」として栄えていました。
ここで行われる冊封使の接待は、琉球王国にとって1番の貿易相手国であった中国と良好な関係を維持するため、重要な国家事業と位置づけられていたんだそう。
そんな長い歴史を持つ識名園ですが、第二次世界大戦の沖縄戦で壊滅的な被害を受けてしまいます…
その後、1975年から約20年かけて再建されて、現在に至ります。建築物は細かなところまでしっかりと再現されて、石碑も元の拓本(石碑の凸凹を写し取ったもの)からつくり直されました。
識名園は世界遺産
識名園は、2000年に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」のひとつとして、首里城など一緒に世界文化遺産に登録されました。
中国と日本、そして沖縄、それぞれの文化が融合した歴史ある建物が特徴で、国の特別名勝にも指定されています。
みどり豊かな庭園を鑑賞しながらのんびり散策できるとあって、日本人のみならず自然派の外国人にも人気の観光名所です。
大きな池を中心として、その周囲をまわるようにデザインされた「廻遊式庭園(かいゆうしきていえん)」で、日本の大名が多く取り入れています。
識名園を楽しむための所要時間
識名園を実際に歩いてみたところ、少しゆっくり観賞しても1時間ちょっとで周れました。
敷地の中心には、大きな心字池(しんじいけ)と呼ばれる池があり、その周りに主だった建築物や見どころが多く点在しています。順路は分かりやすく、主要な見どころは8ヶ所です。
少し急いでる見れば、大人の足なら30分前後で観光することもできるでしょう。
ちなみに園内には自販機や飲食店がありません。夏は熱中症に注意し、お水など購入してから入場してくださいね。
また、庭園はゴツゴツとした石畳で、舗装されていない場所も多くあるので、歩きやすい靴がおすすめです。
識名園の8つの見どころ
御殿(ウドゥン)
識名園のメインの建築物が、こちらの御殿。総面積が約159坪もある、沖縄らしい赤瓦屋根の木造建築です。
冊封使を迎えた一番座と二番座、そして三番座、台所、茶の間など、部屋数は10室以上になります。
往時の上流階級のみに許された格式ある造りですが、雨端(あまはじ)などには、民家風の趣を取り入れています。
石橋(いしばし)
識名園の中心にある池をまたぐ、2つのアーチ状の石橋。中国から影響を受けたデザインだそうです。
中央が高くなっていて、天気によっては水面に反射が映って円形に見えます。
六角堂(ろっかくどう)
石橋を渡って池のほとりを左に行くと、六角堂があります。明治時代までは、六角堂は四角の入母屋づくりの建物であったことが、古い写真資料からわかっています。
六角堂は、池の中の小島に建てられており、御殿から見ると水に浮かんでいるように見えます。残念ながら、六角堂の中には入れません。
育徳泉(いくとくせん)
育徳泉は、清らかな水が途切れることなく湧き続ける泉です。
周囲にある井戸水や川の水が枯れることがあっても、この育徳泉だけは湧き出ていたんだそう。樹々の間から差し込む光が美しく、神秘的な空間です。
石積みは見事な造りで、沖縄独特の「あいかた積み」という積み方で造られています。
湧き出る水の中を上から覗いてみると、カニや手長エビ、小魚を見つけられました。また、「シマチスジノリ」という全国的に珍しい紅藻類の生息地として、国の天然記念物として指定されていますよ。
心字池(しんじいけ)
識名園は、池の周りを歩いて楽しむ廻遊式の庭園。実は建物ではなく、こちらの心字池がメインです。
心字池とは、草体の「心」の字にかたどって造られた、日本庭園の池を指します。歩いて見てるだけでは分からないのですが、上空から見ると「心」という字を崩した形になっているんだそう。
識名園以外でも、日本各地で見ることができる、かつての日本庭園の様式のひとつです。
勧耕台(かんこうだい)
那覇の街並みが見渡せる勧耕台。中国との外交におけるイメージ戦略の一環で、中国使節に琉球の広さを知らしめるためにつくったのではないか、といわれています。
当時、中国使節は琉球王国は狭い島の中にある、という先入観を持っていたそう。そんな中国使節が勧耕台に立ち、遠くを見渡すと海が見えないことから、「想像していたより広い!」と驚いたというエピソードが伝えられています。
昔は町を見下ろすと田畑が広がっていたといいますが、現在ではさまざまな建造物がひしめいていて、那覇の発展を感じます。
番家
こちらは、庭園の番人が詰めていた番屋です。
入り口を入るとすぐに見えてきます。小さいながらも、風情を感じる素敵な建物です。
亜熱帯の植物や生き物
広い敷地内にはさまざまな植物が植えられていて、大きなソテツやガジュマル、沖縄県内で広く分布しているリュウキュウマツなどを見られます。
季節によっては、シークワーサーやグアバの実、月桃の花を見ることもできるそうです。
識名園の基本情報
沖縄県那覇市真地421-7(※那覇空港から車で約20分)
営業時間:9時~18時(4月1日~9月30日)・9時~17時30分(10月1日~3月31日)
※入場締切は閉園の30分前
定休日:水曜日(定休日が休日及び慰霊の日に当たるときは、その翌日になります。)
入場料金:大人400円・中学生以下200円(保護者が同伴する小学校就学前の小人は無料)
駐車場:あり
電話番号:098-855-5936(識名園管理事務所)
識名園近くのおすすめランチ
識名園へ行く前後にランチをするなら、車で約3分の場所にある「識名そば」がおすすめです。無添加の自家製麺が特徴で、地元民を多く訪れます。
メニューは、沖縄そばから定食まで用意。夏には冷たい沖縄そばもおすすめです。
沖縄県那覇市識名1206−1
営業時間:11時~15時
定休日:火曜日
駐車場:あり